こんにちは。梶本と申します。
皆さんから「かじぃさん(または、かじさん)」と、呼ばれています。
あなたもお気軽に「かじぃさん」とお呼びくださいね。
ハンドメイドの実店舗を展開するかたわら、2021年6月より、パンドラの作家さん以外のハンドメイドサポートを踏まえ、ハンドメイドコミュニティ『moirai(モイライ)』をスタートしました。
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ハンドメイド作家さんの作品をお預かりしていると、私は時々このような相談を受けます。
「売れないので、作品の値下げをした方がいいですか?」「売れないので、セールを考えているんですが…」
作品自体は、けっして高い価格設定ではないのです。
クオリティだって申し分ないですし、お客様も店頭で作品を手に取られる様子もあります。
それなのに、お客様はなかなか作品をお迎え(購入)してはくださらない。
このような状況が続くと、作家さんはやきもきしますよね。
ですが、「売れない」ことを理由にした作品の値下げは、オススメいたしません。
今回は、なぜ「売れない」ことを理由にした値下げをオススメしないのか。
この理由についてお伝えいたしますね。
目次
1.ハンドメイドの値下げをオススメしない5つの理由
①ハンドメイド全体の価格相場が崩れる
あなたは、あなたが作っている作品の「価格相場」をご存知でしょうか。
アクセサリーや、布小物、編み物作品など。
ジャンルも幅広ければ、使われている材料や大きさも各々違っていますので、突然「価格相場」と言われても難しく感じてしまう方もいるかもしれませんね。
この価格相場をまったく考えずに、値下げをしたとしましょう。
本来の価格よりも飛び抜けて安くしてしまったら。
あなたの作品の価格を見て、他の作家さん達の中には「あの人が値段を下げたから、私も値下げしないと…わたしの作品が売れなくなってしまう…」という心理状態に陥る方がいらっしゃいます。
あなたが値下げをした価格よりも、更に安い価格でその作家さんはセールを始めるかもしれません。
それを見たあなたは、「あ、あの人は私よりも安くしている!もっと安くしないと、お客様に選んでもらえない!」と、自分の作品を更に値下げすることを考えませんか。
もう、お分かりですね。
こうやって、安易な考えで値下げを始めることが「価格競争」の原因になるのです。
2000円が1500円になり、1500円が1000円になり、1000円が600円になり…
本来2000円だったはずの作品が、600円。
おそらく、作品を作るためにかかった材料費の方が高くついているのではないでしょうか。
今は、minneやcreema、Baseなどといったネットショップを個人で持つことができます。
アプリの登録をしなくても、ネットショップに掲載されている作品をスマホ端末から見ることができるショップもあります。
調べようと思えば、あなたが作られている作品と同じような大きさ、同じジャンル、同じ材料…同じような作品がインターネットから沢山出てきます。
あなたの作品と同じような作品、あなた以外のハンドメイド作家さんはどれくらいのお値段で出されているでしょうか。
せめて、最低限あなたの作品が本来どれくらいの価格で市場に出ているのかをリサーチした上で、値下げの下限値(※これ以上は絶対に値下げをしない金額)は決めましょう。
値下げの下限値も決めずに、ライバルの作家さんと値下げ競争にはまってしまうと、ハンドメイド界全体の価格相場まで揺らいでしまうということをしっかりと意識しておいてください。
②セールを待つお客様が現れる
あなたが「売れない」ことを理由に値下げをしたとします。
あなたの作品に興味を持ってくださったお客様は、初回は「ラッキー、安く買える!」と思われたかもしれません。
あなたも、「セールしたから作品が売れた」と、その時は嬉しい気持ちになると思います。
しかし、あなたが次に新作を正規の価格で出したとしましょう。
お客様は、どんな気持ちになるでしょうか。
値下げの時に作品を買ってくださったお客様の多くは「きっと、待てばこの前みたいに値下げするかもしれない。もっと待ってみよう」このような考えを持つ人が少なくありません。
お客様が、「この作家さんは時期を待てば安くなる」と思い購入を遅らせるようになると、あなたはまた作品が売れない不安で「作品が売れないから値下げしようかな。この前、値下げしたらお客様が買ってくれたし」と、また値下げを考えるようになりますよね。
あなたは、あなたの作品の価値を低く見積もるお客様を、お客様にしたいですか。
あなたの作品を1つ作るのにも、材料費はかかっています。
そして、次の作品を作るためにも材料費はかかります。
お客様により良い作品を届けるためには、材料のグレード(質)は落としたくないですよね。
値下げを考える時には「売れないから」以外の理由をちゃんと立てるようにしましょう。
お客様が「それだったら、安くなるわね」ときちんと納得できる理由であることが必要です。
③あなたの作品価値、あなたの作家としての価値が下がる
あなたの作品を手の取るお客様は、必ずしも毎回同じお客様とは限りません。
その日、初めて来たお客様があなたの作品に興味を持つ場合もあるのです。
初めて来られたお客様の目に映る作品が、値下げをして価格をグッと下げてある作品だったとしたら。
お客様は、あなたの作品の本来の価格を知らずにあなたの作品を見ることになります。
お客様の目には「値下げをした後の価格」が作品の価値として映ります。
そして、前の項目でもお伝えしましたが「セールを待つお客様」が出てくる可能性が高まります。
そのようなお客様から見たあなたは「しばらく待てば商品を安くしてくれる、都合のいい作家さん」になってしまうのです。
作品の価格ばかりでなく、作品の本来の価値や、ハンドメイド作家のあなたの価値を下げてまで、あなたは作品を買って欲しいですか。
あなたの作品や、ハンドメイド作家であるあなたの価値を大事にして欲しいと、私はそう思っています。
④安くしても、売れないものは、売れない
あなたは、値下げをすることできっとお客様が作品を買ってくれる!そう思っているかもしれません。
ですが、値下げをして買っていただける作品は「お客様が既にその作品が何であるかを知っている」場合に限ります。
あなたが限界ギリギリまで値下げをしたとしても、お客様が作品そのものを知らなければ、買われることはありません。
ハンドメイドに限らず、あなたもお客様になってお買い物をしたことがありますよね。
あなたは、あなたが知らない国の言語で書かれたパッケージの商品を平気で買い物かごに入れることができますか?
その異国の商品が、あなたにとって何の役に立つかも分からない、使い方も全く分からないものにお金をお支払いできますか?
出来ませんよね。
私も、出来ません。
例えそれが自分に必要なものであったとしても、その商品について何も知らなければ買いたいとは思いません。
ハンドメイド作品を買いに来られるお客様も同様です。
例えば、「ポニーフック」を買われるお客様は「①ポニーフックが何であるかを既に知っていて、②なおかつお客様にポニーフックを使う理由があって、③お客様の好みに合致していて、④お客様のお財布の予算に見合う」という条件を満たしていなければ買われることはありません。
いくら値下げをしても、お客様が作品そのものの存在を知らなければ、買われようがないのです。
⑤回りの作家さんとの軋轢(あつれき)にもなる
①の項目でもお伝えしましたが、あなたが値下げをすることで「価格競争」が生じてきます。
そして価格競争の陰で「価格競争」に加担しない作家さんの存在があることも忘れて欲しくはありません。
なぜ、その作家さんは価格競争に加担しないのでしょう。
テレビ放送などで「主婦が家事の片手間に出来るお小遣い稼ぎ」「ハンドメイドを始めた主婦が月収○○万!」と取りざたされることも影響してか、一部では「おうちで簡単に稼げる副業」という印象で見られてしまうハンドメイド。
しかし、真剣にハンドメイド活動に向き合っている作家さんほど、その道が簡単ではないことを知っていますし、簡単に稼げるお小遣い稼ぎではなく、ビジネス的な考えを持っていないとハンドメイドで生き残っていけないことも知っています。
同時に、ご自分の作品に誇りを持っていますし、ご自分の作品を誰よりも愛していらっしゃいます。
だからこそ、ご自分の作品価値を正当に評価されなくなる「価格競争」には加担しません。
ですが、間近で起こる「価格競争」を横目に見ながら、心持ちは穏やかでいられるほど、割り切れているわけではない作家さんも沢山いらっしゃいます。
「価格競争」が起こることで、自分が作っている作品の市場価値が崩壊していく。これによって、自分の作品も少なからず影響を受けるかもしれない。
ネットショップならまだしも、イベント出店や委託販売においては、お客様の様子、反応がダイレクトに見える場合があります。
あなたが良かれと思った値下げですが、それらを良く思わない作家さんもいらっしゃるかもしれません。
値下げを良く思わない作家さんがこれまでに何年も頑張って来られた背景を考えると、作品をとにかく売りたいがための安易な値下げに対して、良く思えないその気持ちも分かるのではないでしょうか。
2.値下げを考えるときに押さえておきたい5つのポイント
①市場調査をする
あなたの作られている作品のジャンルが、市場ではどれくらいの価格で販売されているのか「調査」をされることをオススメします。
ここで注意をしたいのは、ただ何となく市場を見回せばいいというわけではないということ。
例えば「リボン」というジャンルについて調べるとします。
デザインや素材にこだわらなければ、100均にも沢山リボンは並んでいますよね。
ですが、100均で販売されているリボンと、あなたの作るリボン。
ジャンルは同じでも、違う点が沢山ありますよね。
「素材にいいものを使っている」「大きさやデザインにこだわりがある」「丈夫に作ってある」「大量製作が出来ない」「材料の大量仕入れができない」「リボンの資格を持っている人が作っている」
ジャンルが同じであっても、違う点が沢山あればあるほど「比較」は出来ないですよね。
例えば「ラーメン」というジャンルでも「こだわり抜いた手打ちラーメン」とスーパーの特売で並んでいた「カップ麺」とでは、1人分の量は同じでも価値に差が出るのは予想ができませんか。
そしてそれを購入されるお客様も「こだわり抜いた手打ちラーメン」に2000円支払って喜んで食べる人もいれば、特売95円の「カップ麺」にブーブー文句を言いながら食べる人もいます。
ラーメンの例えからもお分かりのように、あなたが作っているものとかけ離れたものでは調査をしても参考にはなりにくいのです。
市場調査を行う時は、あなたが作られている作品とかけ離れていないものを選んで調査するとよいでしょう。
②セールの枠組みを決める
セールをするのであれば、枠組みを決めることをオススメいたします。
セールの枠組みを決めることで「稀少性(少なくて価値が上がる)」を感じさせることができます。
例えば「夏季限定!」「〇月末まで!」「〇時まで!」というような期間、時間の枠組みを決めてセールを行う場合。
お客様は「今しかセールされていない!」「今買っていかないと、損しちゃう!」と買いたい気持ちに火が付きます。
スーパーのタイムセールや、「今登録すると、何千ポイントがついてくる!」というポイント還元などの取り組みも、期間や時間の枠組みを利用しています。
それから、年齢や特徴での枠組み。
「シニア割り」「レディースディ(女性割引)」「年数割り」など。
ある特定の条件を満たすことで、割引になるように枠組みされていますね。
誰でも割引される訳ではない状況が、お客様にとっての「この条件に当てはまる特別感」を感じさせることができますよね。
そうすることで、お客様の買いたい気持ちが高まるのです。
枠組みを決めてセールをする時に気を付けないといけない点は「軸をブラさないこと」。夏季限定でセールされていたものが、10月になっても11月になっても同じようにセールされていたら違和感を感じます。
夏だけのセールじゃないのか。
いつでもセールと変わらないなら、今買わなくてもいいや。
お客様がこのように感じてしまうと、あなたの作品を買おうと思うきっかけも薄れてしまいます。
セールをするのであれば、あなたの中で「今回のセールは、こんな枠でやろう」という計画を立てた上で始めることをオススメします。
③自分で作品の価値や、作家の価値をないがしろにしていないか考える
特に経験の浅いハンドメイド作家さんにとても多いケースです。
ハンドメイドを始めたばかりで、自分が本当に販売してもいいものか自信がない。
これまでハンドメイドは趣味でおこなっていて、販売を本格的にしたことが無い。
経験の浅いハンドメイド作家さんに目立つのが「自信のなさ」です。
経験が浅い分、自信がないお気持ちは分かります。
ですが、「私なんかの作品でも買われますかね…」「私なんか…ただの主婦ですし、ただの主婦の作ったものでもいいんですか…?」「私なんかが、こんなものに値段付けていいんでしょうか」
これを聞いている(※時には店頭に居合わせて聞かされている)お客様は、どう思われるでしょうか。
では、少し例を変えてみます。
バレンタインデーに「えっと…私お菓子作りは趣味程度で…これまではお友達に作ったお菓子をタダで配ってあげていたんだけど…私なんかが作ったものでも受け取ってもらえますかね…?あ、私なんかホントに趣味なんで…あなたもタダでいいんですけど…」と自信なさそうに渡すチョコレートと、「あのっ!あなたに、どうしても渡したくて…お菓子作りはこれまでも趣味でやってたんだけど、今回ちょっと頑張って凄いの作っちゃった!お口に合うといいな」と言って、二人きりの時に恥じらいながら差し出すチョコレート。
同じ量、同じラッピング、同じ価格、同じ手作りのチョコレートだったとしても。
まったく同じものを贈っていながら、随分印象が違うと思いませんか?
あなたが受け取る側だったとしたら、どちらのチョコレートを受け取りたいでしょうか。
まったく同じ作品でも「私のなんか、私のなんか…どーせ…私のなんか…」と納品された作品と、「ほら!綺麗にできたよー!堂々とお客様に見てもらってね」と納品された作品と。
ハンドメイドの作品も同じですよね。
あなたは、どちらの作品を手に取りたいでしょうか。
あなたも、物を作る表現者なら経験があるかもしれません。
「作り手の気持ちは作品に現れます」
「物(作品)」というフィルターを通して、あなたの抱えている「私なんか」という気持ちは、お客様に伝わります。
自分の作品は、誰よりもまず自分で愛していつくしんで欲しいと、私はそう思うのです。
そうでなければ、本当に「素晴らしいもの」と胸を張って、お客様にご案内が出来ませんからね。
あなたは「私なんか」「私のなんか」が口癖になってはいませんか?
心当たりのあるあなたは、まずはそこから改善してみましょう。
④「価格」以外の売れない理由を探す
あなたは、あなたの作品が購入されない理由は「価格」だけに原因があるとお考えでしょうか。
確かに「価格」も、理由の1つにはなるかもしれません。
ですが、ちょっとだけ思い出して欲しいのです。
あなたは「価格」すら惜しまない強烈な「欲しい」の気持ちが沸き起こって、何かを買ったことはありませんか?
私は自分の知らないことを勉強するのが好きなのですが、気になる講座のお知らせが入るとすぐにお申し込みをして受講します。
その時に見ているものは「講座の内容、講座を受けて自分にどう活かせそうか、誰が教えてくださるか」という点。
価格についてはほとんど見ていません。
多少金額が高かったとしても「この人の、この講座だもの。そりゃそれくらい値段もするよね!」と納得しています。
お客様の中には、この私のケースのように「価格」ではない部分に価値や魅力を感じてお支払いをしてくださる方もいます。
そのようなお客様は、分不相応に安過ぎる価格だと、逆に「何か裏があるんじゃないの?」「これは本物(本人)なのかしら?」と怪しく感じてしまいます。
あなたの作品を購入いただけない「価格以外の理由」については心当たりがありませんか?
お客様が、欲しくなるタイミングで作品のご案内が出来ていますか?
あなたの作品について、そして作家であるあなたについて、お客様はどれくらい知っていますか?
セールで作品の値下げをする前に、価格以外に購入されない理由がないか、原因を探してみましょう。
実はお客様に「知られていなかった」ことが購入されない原因だった、というケースもかなり多いですよ。
⑤回りの作家さんに意見を求める
あなたは「ハンドメイド活動は1人でするもの」と思い込んではいませんか。
moiraiというハンドメイドコミニュティのメンバーさんは、ハンドメイドで実績を伸ばしている作家さんが多いのですが、実績を伸ばしているのには理由があります。
実績を伸ばしている作家さんは、例外なくコミニュティの中でハンドメイド作家さん同士、相談をしたり情報交換をしたり、お知らせをしたり、宣伝や告知をしたり。楽しみながら学びながら、お互いにコミュニケーションを取っています。
分からないことは素直に「分りません」と言える場所があるのです。
ハンドメイド作家さんは、どうしてもお互いをライバル視してしまうところがあります。
あなたにとって前に進めるヒントをたくさん持っている人がいるのに、勝手に相手を目の敵にして心を閉ざしていても、それはあなたが損をするだけではないでしょうか。
人間は、「自分のことが一番、自分で分からない」つまり、客観的に見ることができない生き物。
それが原因となって、あなたの思いとお客様の思いとの間にズレが生じてくることがあります。
あなたとお客様の思いがズレたまま、嚙み合わないままだと、売れるものも売れない、という訳ですね。
けして、1人で活動をしていることを否定するわけではありません。
普段は、それでも良いでしょう。
ただ、あなたの売れない理由について、あなたは自分で気付かなくても、誰かに客観的に見てもらうことで気付くことが沢山あります。
ハンドメイドコミニュティ moirai(モイライ)はこちら
moirai(モイライ)は私が運営しているハンドメイドコミニュティですが、ここのメンバーさんは本当に生き生きとハンドメイド活動をされていらっしゃいます。
メンバー登録するかどうかは置いておいて、メンバーさんが利用しているチャットの様子をこちらで一部公開していますので、「作家さんとコミュニケーションを取る」ということにイメージが出来ないあなたの参考になるかもしれません。
実は私も、自分のやり方を第三者に見ていただいて、定期的に意見をいただいています。
私自身も自分から教わる機会を作っています。
「自分のことは、自分が一番見えていない」ことを、私は自分で知っているからです。
自分も客観的に人の目を借りて、自分の外側から見ていただいているからこそ、確信を持ってあなたにお話出来るのです。
3.実際に店頭であった3つの事例
①「何に使うのか分からない」
この言葉は、実際に店頭に来られて作品をご覧になっていたお客様が口にされた言葉です。
「何に使うのか全く分からない」
その作品は、いわゆる「自分のマーク」を自分で作ることができるパーツというものでした。
作品名もなく、具体的な使用シーンの写真なども掲示がなくて、作品がごそっとかごに入った状態で無造作に置かれていました。
当初、セットで500円で出されていたのですが、手に取るお客様は皆さん首をかしげて「コレ、何?」「何に使うのか全く分からない」「ボタン?穴も開いてないけど」このような反応です。
どの年代の方も、男性も女性も、シニアの方もお子様も。
「何に使うのか分からない…」
もちろん、実際に作品を使って「これは、こうやって使うものですよー」と案内も繰り返し行いましたが、そもそもお客様の中に「自分のマークを作るパーツ」という発想自体がなかったのです。
最終的にこの作品は500円から50円まで値下げされましたが、委託スペースの利用期間中、購入に繋がったのは1つでした。
その1つも、本来の「自分のマークを作るパーツ」ではなく「ボタン」の用途で使うように購入されていました。
この作品が、「自分のマークを作ることができるパーツ」「どんな用途で使うものか」「どんな状況で使えるものか」「使用の見本例」「どんな人が作っているのか」など、事前にお客様が知っていたら、また結果は違っていたかもしれませんね。
②「これ、偽物ね。私、本物しか買わないの」
こちらも、来店されたお客様にいただいた言葉です。
年配のお客様で、とても素敵なマダム。
いつもオシャレなお洋服と、目を引くアクセサリーを身につけていらっしゃる方でした。
「これ、偽物ね。私、本物しか買わないの」
スワロフスキーのアクセサリーを試着しようとされていましたが、値下げされた価格を見るなり、試着はせずに作品を戻されていました。
「デザインは可愛らしいと思うんだけど、ごめんなさいね。でも、本当のスワロフスキーだったらこんな値段じゃないわよね。欲しかったんだけど、1000円じゃいくら何でも、おかしいもの。何でこんなに安いのか理由が分からないもの。きっとスワロフスキーじゃなくて、別の材料ね」
こちらの作品は、もともとは4000円台で出展されていた作品でしたが、1000円に値下げされていました。
お客様の中には、このように「価格」で判断し、値下げをしたために買うのを辞めてしまう作品があります。このケースの場合は「値下げの理由」も無かったために、お客様の中で「この作品は偽物」という捉え方をされていらっしゃいます。
「安い」ことが必ずしも、お客様に喜んでいただける訳ではないということが分かる事例ですね。
③「同じジャンルなら、知らない作家さんから買うより〇〇さんから買うわ」
これは、購入を迷われていたお客様が、作品を選んだ決め手についてお話された言葉です。
お客様は同じ作品ジャンルのアクセサリーを見比べて、どちらにしようか迷われていました。
1つは、1300円のイヤリング。
もう1つは、値下げして800円で表示されていたイヤリング。
このお客様は、ずいぶん長いこと迷われていましたが、最終的に「この作品を作ったのって…〇〇さん?」とご質問をされました。
それぞれの作家さんのお名前を聞いた上で、
「同じジャンルなら、知らない作家さんから買うよりも〇〇さんから買うわ」
と、1300円の作品を選ばれていました。
値下げをした作品とは500円の差。
購入の決め手となったものは、作品の価格ではなく「誰の作品か」といった点でした。
値下げをした価格よりも、作家さんの価値、「この人から買いたい」が、購入の決め手として評価された事例です。
3.まとめ
実際に店頭に立つとお客様のリアルな声をたくさんいただきます。
お客様が求めている「欲しいもの」と、作家さんが感じている「お客様に買って欲しいもの」の間に、ズレが生じている場合も度々起こっています。
お客様が求めているのは、必ずしも「安さ」ではないということが、今回の記事でお分かりいただけましたでしょうか。
なかなか作品が売れなくて、少しでも作品を買って欲しくて値下げを考える作家さんはとても多いです。
しかし、値下げはお客様のためではなく、「作品を買って欲しい作家さんのため」に存在しています。
「作家さんのための値下げ」は、よくよく掘り下げていくとメリットになることはほとんどないのです。
それどころか、長い目で見ると値下げをした作家さんにとってもマイナスに転じることが多いですよね。
そして、今回の記事で値下げをする前に、向き合わなければならない問題が沢山ありましたね。
作品の認知度、ハンドメイド作家としてのあなたの認知度、作品の使用例や実際の使い方…。
お客様が事前に作品について知っていたり、作家さんについて知っている。
あるいは、お客様が作品について知らなかったとしても、作品が置いてあるその場で、お客様に「作品について知らせる仕掛け(POPなど)」や「値下げについての明確な理由」が掲示してあれば、結果はまた違っていたかもしれません。
「値下げ」は最終手段。
まずは、他に何かできないか。
告知の仕方、作品の見せ方、お客様への案内の方法、発信など改善できる部分は無いか。
真剣に向き合ってから、決断されることをオススメします。
「値下げ」を検討するのであれば、「値下げ」があなたや回りや、作品を購入されるお客様に何をもたらすか、よくよく考えてから決めて頂きたいと思います。
ハンドメイドコミニュティmoirai(モイライ)では、このblogにあるような内容の勉強会を雑談の中から日々おこなっています。
詳細についてはこちらをご参照ください。